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BLOG

2019.05.18

ヤロン・ブルック博士のこと

Category : 影響
Author : 脇坂あゆみ

来週来日するヤロン・ブルック博士、米国アイン・ランド協会(ARI)の理事長について。

 

そもそも、日本では、「アイン・ランドって誰?」という状況のなか、ヤロン・ブルックといってもわからないが、ヤロンは、アイン・ランド哲学のスポークスパーソン。論客としては当代随一と言える。昨年までARIのトップを20年ほど勤め、その活動範囲やリソースも大きく拡大した功労者でもある。

 

彼の講演やラジオを聞いていると、いつも一貫して同じことを言っていることがわかる。

アイン・ランドの思想と正当性について、飽きもせず、熱く話し続けている。

 

すごいのは、どんなトピックであっても全くブレることなく、瞬時にポイントを見定め、本質を見極め、良し悪しの評価を下すことができること。

これが、思想基盤があることなのか、と見ているとわかる。一つの思想体系を身につければ、あらゆることがより早く、深く理解できるようになるのだろう。統合されたOSは、迷ったり止まったりせずに、スムーズに答えを弾き出す。

実際、オブジェクティビズムとは、客観的な事実をありのままに認識し、一貫した論理と倫理に基づいて評価することなので、ヤロンは歩くオブジェクティビストと言える。

 

最初に彼に出会ったのは2005年。『肩をすくめるアトラス』の邦訳出版の一年後、たまたまある講演会で日本を訪れて、出版社であるビジネス社の社長と、編集者さん、そして翻訳エージェンシーの担当者の方とランチをした。その時は少し言葉を交わした程度。

 

次に出会ったのが十年後の2015年。ARIが主催するオブジェクティビズムの夏のカンファレンスで、カリスマティックで熱い基調講演が印象的だった。

 

カンファレンスは、講演会と数十人規模の分科会があり、「ARIの国際化」という分科会で、ヨーロッパの金融機関などで勤めながらランドの作品を愛読し、普及してきた活動家の人たちとヤロンとのパネルで、参加者からこんな質問があった。

「日本でのアイン・ランドの可能性についてどう思いますか?」

その会は、日本人どころかアジア人らしき人も自分以外はいなくって、質問者も見た目は白人のアメリカ人。どうしてそんな質問が出て来たのか謎だったけれど。。。

「日本には、あまり希望はないと思ってるよ。訪れたことはあるけれど、人はみんな似たような格好をしていて文化的には中国よりもずっと集団志向が強い。何より、少子化がひどいことになっている滅びゆく文明だからね。よく知らないけど」

「滅びゆく文明」って、酷すぎる。。

とは、モデレイターのフィンランド人の女性も思ったのか、ここに日本人の翻訳者がいるからと私にマイクをくれた。

そのあと、エレベーターで一緒になったヤロンが、なんかごめんね、と言ってきたので、「今度日本にきたら、日本人にランドは無理とか、滅びゆく文明とかは違うとわかってもらえる」みたいなことを言ったように記憶している。

それから最終日のバンケットで、挨拶をする機会があったので、「もし中国方面に行く予定があったらついでに寄ってください」と言ったところ、本当にきたのが三年前。

(ついで、と言ったのは、日本だけのために来ると思うとちょっと重いので)

 

日本人が内面はどこの誰よりも自由でランドを好きになる可能性があるし、最もクリエイティブな人たちと思う気持ちに変わりはないけど、あれから、ランドの作品が人々を奮い立たせてきたか、というと、多分まだまだ。

 

そして、今回、3回目の訪日になる。

 

今回、ヤロンの熱い言葉は、迷いおおき私たちをどんな風に奮い立たせてくれるだろうか? そして彼には、日本は、前よりも活気と未来のある文明だと思ってもらえるのだろうか?