2024.12.30
『ロマン主義宣言 アイン・ランドの芸術論』を出版しました
先月、『ロマン主義宣言 アイン・ランドの芸術論』出版しました。
翻訳は、ARCJメンバーの宮﨑哲也さん。ARCJが企画・監修しています。
ランドは、『水源』(1943)、『肩をすくめるアトラス』(1957)の小説が有名ですが、1950年代後半、弟子であったナサニエル・ブランドンらがフォロワーを組織化し発行したThe Objectivist Newsletter(1962-1965)や雑誌「The Objectivist」(1966-1971)を通じて多くの論文を発表しています。
こうした論文はテーマごとにまとめた書籍として出版されており、道徳・倫理をテーマとするVirtue of Selfishness (1964)は、日本語訳(『セルフィッシュネス – 自分の価値を実現する』)が出版されていますが、他の代表的な論文集はまだ邦訳がありませんでした。
今回出版した『ロマン主義宣言』は Romantic Manifesto: a Philosophy of Literature (1969)で、原題は「文学論」に近いのですが、内容は美学・芸術の幅広いジャンルを扱っているためランドの芸術論といえます。
ランドといえば、アメリカでは保守共和党に信奉者が多く、またサイバーリバタリアンと呼ばれる自由主義者の実業家たちにもファンが多いことから政治・実業界への影響がよく知られており、ARCJの定例会でも政治経済のトピックを取り上げることが多かった思想家です。ですがARCJ発足当時からランド思想で面白いのは芸術論、ブログカテゴリには絶対アートを入れてください、と主張されたのが宮﨑さん。ロックバンドRUSHのニール・パートがランド作品を愛読し、『2112』収録の楽曲などには大きな影響が見られることはよく知られていますが、宮﨑さんはランド思想とデヴィッド・ボウイ、ボブ・ディラン、イーストウッドの作品との関連づけも果敢に(!?)行ってこられました。
『ロマン主義宣言』では、絵画、彫刻、音楽、映画など様々なジャンルで多くの事例を参照しながらランドの芸術論が展開されます。
ランドにとって、アートとどう向き合うかは生死に関わる問題であり、アートこそが価値観を具現化し、精神的なニーズを満たすもの。
単純明快で面白いランドの思想小説や政治・経済思想と比べると多少難解ですが、、
アートとは何か、自分にとって価値のあるアートは何か、
改めて考えてみたい人にとって、読んでおいて損はありません。