2020.03.08
中国情報の読みかた
コロナウィルスで心落ち着かない日々が続きますが、、「中国の情報統制セミナー」を開催しました。
銀座の区民館にて。会員5名のほか、フルブライトスカラーとして若者の政治参加を研究されているヴィクトリア・エドワーズさんも参加。
講師は、中国での起業経験もある内藤明宏さん。中国語も堪能なビジネスパーソンですが、リバタリアンです。
近頃はニュースに釘付けの日々。
ネットニュースから週刊誌から、WSJ、FT、LTタイムズ、ワイドショー、ツイッター、致死量浴びてもうたくさんな気もしますが、、
そんな中でも中国のコロナウィルスの報道事例、そこから推察される中国の報道、情報統制の実体は衝撃でした。
「湖北省副省長、楊雲彦は記者会見の席で、湖北省は迅速に肺炎患者用ベッドを手配し、指定病院の設置を行っていることを発表。
全省で112カ所の指定病院を設置し、10万床近いベッドを開放した」
。。。。この記事の突っ込みどころはどこでしょう?
といった事例をいくつか。
私たちは日々、ニュースを見ながら、「何が本当なんだろう?」と考えます。どれが事実で、何が真実に近いのか、と。
ですが、中国のメディア情報を同じくせで見ると間違う。なんと、「正しいかどうかを考えることに意味がない」!?
真偽ではなく、党の方針に従うかどうか、が大事であって、中国情報を見るときは、その意図を見抜くことが重要。
内藤さんは、SARSの時期も今よりも近くから中国の情報発信を眺め、中国とは何かを考え続ける中でそのような結論に。
さすがに情報量に関しても隠蔽に関しても、SARSの頃とは状況が変わっているとは思いますが、中国の現体制の本質と歴史的な文脈は同じと言えます。
2013年の著書『なぜ中国はこんなにも世界で嫌われるのか』 にはより詳しく、その論拠や、実体験が書かれていて面白いです。
嫌中は右翼の偏見、旧ソ連とは違って中国は経済発展とともに民主化し、いずれ自由主義経済と統合すると漠然と思っている人にはおすすめ。
嫌中は日本だけの現象ではなくて、天安門事件を転換点として行われた中国による政治キャンペーンと中国の影響拡大に対するグローバルな反応です。
そして今の中国を見る限り、民主化は起こりそうにもなく、今後も共産党をいただいた王朝は継続する。。。
彼らの外交目標は「友好」や「尊敬」でなく「力と利益」
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中国人は「ルールの普遍性」を認めておらず、「破れないルールはない」と考えているから、ここ日本ではそうではないことを徹底的に叩き込む必要がある。
これは文明の衝突であり、「文明の衝突は、自然界の自然淘汰の如く繰り返されるものかもしれないが、その衝突で自分たちの価値観を押し付け合い、いつまでも血を流し続けるのは学習能力を持つはずの人間として情けない話」対話はハードルが高いが摩擦ぐらいに抑える方法を考えるべき。
少なくとも先進国には、「思想統制を行う抑圧的政府もないし、世界中の情報に直接触れられるインターネットも普及し、古代から現代までの全世界の偉人が英知を込めた著書を容易に手に入れられる環境もある。見下しあいの構図を断ち切れないのは、我々自身の責任である。言い訳の余地はない」
リベラルが信じていた「文化の違いがあっても、みんな仲良くなれる」というのは理念だけの幻想であった。考え方や価値順位が全く異なるという「差異」は確かに存在し、異文明の人間同士が直接関わりを持っていく中で、それはリアルな「摩擦」や「衝突」として実際に直面することになる。それは理想論などではなく、柔軟な思考能力と周到な準備、豊かな経験、そして大変な忍耐力を双方が顕示することによってしか越えられない高いハードル」
『なぜ中国はこんなにも世界で嫌われるのか』(2013年 幻冬舎新書)
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自由至上主義者、特にアイン・ランドの読者としては、個人の自由や法の支配が前提とされない中国での経済的な成功と発展は謎であり続けますが、中国情報との距離のとりかたについて、そしてここ日本の中国情報の読み方についても、学びの多い夜でした。